子どもの魔法の力
かくいう私も、はじめから仕事と同じぐらい家族とのふれあいを大事にできていたわけではありません。
独身時代は「仕事こそわが命」という考え方で、仕事一辺倒でしたから。独身時代は自分のことばかり考えていればよかったのが、結婚後は家族のことも目くばりしなくてはならなくなり、この急な方向転換には、ずいぶんとまどいと抵抗がありました。休みの日も仕事を優先しようとして、妻に「土曜日か日曜日のどちらか一日ぐらいは、家族のために使って!」と何度も注意されていたのです。
以前から約束していたディズニーランド旅行を、「仕事が忙しい(重要なプレゼン資料の作成)から、やっぱり無理、できない」と言って、妻の怒りを買ったこともありました。(妻の怒りにびっくりした私は、その後4日間ほど書斎にこもって完成させ、約束は守りました。)
そうした私は変えたのは、子どもと過ごす時間の意外なほどの癒やされ感です。
・「ねえ、いっしょに遊ぼ」という誘惑に負けて始めたキャッチボール。ただのボールのやりとりですが、楽しいのです。
・家族4人でやったトランプ、カルタ、ウノ……。勝っても、負けても、楽しかった!
・いっしょにお風呂に入って背中に書いた文字を当てっこしたこと。入浴後には、汚ればかりでなく疲れも落ちていました。
・寝る前にわが子を抱きながら、絵本の読み聞かせをしたこと「この続きはまた明日」というと、「もっと読んで」とせがまれたこと。今思い出してもうれしい時間でした。
癒やす人が癒やされるとは、よくいったもので、子どもの笑顔ー楽しそうな表情ーが、本当に癒やしてくれました。これこそ副作用の全くない栄養ドリンクでしょう。
ストレス解消として、一人でコーヒーを飲んだり、一人でおいしいものを食べたり、一人で好きな音楽を聴いたりもいいでしょう。それも効果はありますが、この「子どもと遊ぶ」ことの効果は絶大です。子どもと遊んだ後は、ストレスがすうっと抜けている自分に気づくでしょう。子どもは、親のストレスを癒やし、仕事力を回復させる「魔法の力」をもっているのです。
この子どものもつ魔法の力で、親たちもまた、仕事で疲れて帰ってきても、癒やされ、再び職場で働く元気を取り戻すことができるのです。
忙しくて時間がない?でも、子どもとのふれあいタイムは、これ正味10分でも大丈夫なんです。子どもとかかわるのは、「むずかしい」「めんどう」「時間がない」…などの言い訳をして避けるなんて本当にもったいないですよ。時間がないどころか、こうして子どもとかかわった後は、不思議なほど、仕事の効率が進みます。元は十分過ぎるほど取れるということ、これは多くの親の経験則です。
これまで仕事一辺倒でも、対応を変えればいいのです。あまり認めたくないかもしれませんが、仕事にはいくらも代わりがいます。しかし、その子の父親・母親はあなたしかいないのです。子どもとの宝物の時間を共有することで、「子どものもつ魔法の力」をもらって、ぜひともそのパワーを実感してください。
子育ては賞味期間限定、やがて子どもは自立し巣立っていく
子育ては、賞味期間限定です。 おんぶや添い寝ができる時期 いっしょに入浴しながら楽しく会話できる時期 親の読み聞かせを喜んで聞いてくれる時期 「お母さん(お父さん)いっしょに遊ぼう。」と子どもから遊びをせがまれる時期 親が誘って喜んでついてきてくれる時期 親子で手をつないで、あるいは肩車してお祭りへ行ける時期 習い事の発表会や部活動の大会の応援ができる時期…
ある日、「今日から一人で寝る!」という日がきます。
ある日、(異性の場合)「いっしょにお風呂はいや!」という日が来ます。
ある日、「自分一人で読むから。」という日が来ます。
ある日、「お祭りは友達と行くから。」という日が来ます。…
つまり、やがて子どもは自立し、巣立っていくのです。そして、今度は父親・母親として子育てしていく立場になるのです。うるさいぐらいに、「ねえ、遊んで!」とせがんでくるのは、いつまでも続くわけではないのです。このような「子育てゴールデンタイム」といえる期間は、子どもが十歳前後ぐらいまででしょう。
くり返しますが、子育ては賞味期間限定です。子どもが大人になっても毎年決まってめぐってくる桜の開花の期間よりも、実はもっと厳しい賞味期間限定なのです。散ってしまってからでは決して味わえない桜の花を、その最高の旬の時期に味わうように、わが子の子育てもその期間中存分にかかわり、その醍醐味を味わってみませんか。